はじめに
人工知能(AI)は単なる「計算知能」から、さらに高度な「エンボディドAI(Embodied Intelligence)」へと進化を遂げています。エンボディドAIとは、ロボットやバーチャルエージェントといった“身体”を持ち、環境とリアルタイムで相互作用しながら、知覚・学習・適応・意思決定を行う能力を備えた知能のこと。単なる情報処理にとどまらず、「知覚」「行動」「認知」が深く融合した新しい形のインテリジェンスです。
エンボディドAIは、自動運転、スマートホーム、医療・介護、産業オートメーションなど、幅広い分野で既存の常識を覆そうとしています。しかし、その“脳”となるAIモデルを鍛えるには、現実世界における多様で高品質なマルチモーダル・インタラクションデータが不可欠です。
一方で、現実世界からのデータ取得は容易ではなく、「データ不足」がエンボディドAIの実用化を阻む最大のボトルネックとなっています。
エンボディドAIのデータ取得を阻む3つの壁
1. 高コスト
エンボディドAIに必要な高品質データの収集は、非常にコストがかかります。現在主流の手法にはそれぞれ課題があります。
遠隔操作ロボットによる実データ:品質は最高だが、装置・人件費が膨大でスケーラブルでない。
シミュレーションによる合成データ:コストは低いが、現実とのギャップが大きく、微細な誤差が実運用で致命的になる場合がある。
モーションキャプチャーデータ:精度は高いが、ロボットの構造に合わせた後処理が必要。
インターネット上の画像データ:量は多いが、ノイズが多く構造化されていないため、実用性に欠ける。
どの手法にも一長一短があり、理想的な解決策には至っていません。
2. 統一されたデータ標準の欠如
エンボディドAI分野では、いまだ共通のデータフォーマットや処理基準が確立されていません。タスク・デバイス・環境ごとにデータ形式が異なるため、再利用や共有が困難です。加えて、照明条件や物体形状、文化的背景など、さまざまな要素がモデルの汎化性能を制限しています。
3. 動的インタラクションデータが希少
エンボディドAIの核心は、「人×環境」の動的でリアルタイムなインタラクションデータにあります。しかし、現実世界での自然な人間とロボットのやりとりは瞬時に変化し、高精度センサーと同期技術がなければ記録できません。特に転倒や緊急対応といった稀な状況は、現実での収集がほぼ不可能です。シミュレーションでは再現性やリアリティの両立が難しく、依然として課題が残っています。
Nexdataが提供するエンボディドAI向けデータソリューション
Nexdataは、エンボディドAI開発を支える 高品質な既製データセット と 柔軟なカスタマイズデータ収集サービス により、企業のAI開発を強力にサポートします。自社運営の専用収集施設と先進的なマルチモーダル収集インフラを活用し、「すぐに使える高品質データ」を提供しています。
高精度な既製データセット
10万点以上の高精度3Dモデルデータセット
人物、動物、植物、建築物など、日常生活に登場するオブジェクトを網羅。各モデルには、高品質なメッシュ(Mesh)とテクスチャ(Texture)を付属しています。テクスチャとメッシュのアライメント精度が高く、視覚的に違和感なし。不完全なモデルやセンシティブなコンテンツは一切含まれず、商用利用に最適なデータセットです。
20万件の「第一人称視点」人×物インタラクション動画
家庭、オフィス、ジム、娯楽施設など多様なシーンで撮影しています。両手の動きと周囲環境とのインタラクションをそのまま記録しています。動画全体の説明文に加え、タスクごとの「思考チェーン(Chain-of-Thought)」形式の詳細アノテーション付き。
15万件のリアルタイム対話動画データ
内容としては動画(.mp4/.avi/.mov)、対話テキスト(.json)、音声(.wav)の3点セットになります。人物・食べ物・ペット・日用品など多彩な対象をカバー、単純な事実確認から、複雑な推論を要する会話まで幅広く収録しています。
15万件の3Dハンドジェスチャーデータ
マスク画像、深度画像、カメラ内部パラメータ、3Dキーポイント、メッシュ、ラベルファイルを一式提供しています。第一人称・第三人称の両視点で収集(室内・右手・手持ちなし)。21点の3D手部キーポイント、14種の静的ジェスチャー、4種の動的ジェスチャーなど多様性を備えています。全ての画像・深度データは精密にアライメント済みです。
カスタマイズデータ収集・アノテーションサービス
Nexdataは、お客様の開発要件に応じて最適化された カスタマイズデータ収集サービス を提供しています。企画から収集、アノテーション、納品まで一貫した体制で支援し、迅速かつ信頼性の高いデータ提供を実現します。
要件に基づく収集設計と環境構築
対象ロボットや利用シーンを踏まえ、専用スタジオや実環境での収集設計を策定。人・物体・環境がリアルに交差する複合的シーンを再現します。
マルチモーダル・マルチセンサー同期収録
RGBカメラ、深度カメラ、LiDAR、IMU、音声、触覚センサーなどを同期させ、第一人称・第三人称両視点からデータを取得。
異常・稀少シーンの再現
日常動作に加え、転倒・緊急回避・障害物検知などの稀なシーンも設計して収集。これによりモデルの堅牢性と汎化性能を強化。
高精度アノテーション
自社開発アノテーションプラットフォームを活用し、効率的かつ正確なアノテーションを実施。チェーン・オブ・ソート(Chain-of-Thought)形式や階層型ラベルなど、柔軟な形式に対応。
コンプライアンスと匿名化対応
収集データはGDPRや国内法規に準拠し、個人情報を完全匿名化。プライバシーを守りながら商用利用可能な品質を保証します。
短納期・大規模対応
標準化された収集・処理パイプラインにより、迅速な納品が可能。数十万件規模の大規模収集・アノテーションにも対応しています。
実績紹介:家庭用ロボット向け第一人称視点データ収集プロジェクト
クライアント:大手家庭用ロボットメーカー
目的:複雑な家庭環境下で、環境認識・経路計画・自然な人間対話が可能なAIロボットの開発
課題:
アパート・オフィスなど多様な室内環境、照明条件、家具配置に対応
日常動作に加え、「転倒」「夫婦喧嘩」などの異常・稀なシーンも含める必要
個人情報・プライバシー保護の徹底(GDPR・国内法規準拠)
Nexdataのソリューション:
専用スタジオにて、リアルな家庭環境を再現
高精度マルチセンサーで視覚・音声・深度データを同期収集
自社半自動アノテーションツールで効率的かつ高精度なアノテーションを実現
全データを匿名化処理し、プライバシー基準を厳格に遵守
結果、クライアントは開発期間を30%短縮し、ロボットの環境理解精度を大幅に向上させることに成功しました。
Nexdataが目指す未来 ― エンボディドAIの「データ基盤」を創る
エンボディドAIの実用化には、高品質かつ多様なデータが不可欠です。Nexdataは、既製データセットの拡充に加え、専用ロボットデータ収集拠点の構築や、シミュレーションとリアルデータを融合したハイブリッド環境の整備を進めています。さらに、自社開発のAI支援アノテーションプラットフォームを活用することで、
既製データの即時提供
要件に応じたカスタマイズデータ収集・アノテーション
プライバシー・セキュリティを考慮したコンプライアンス対応
を一括で実現。企業のAI開発スピードと実装力を根本から加速します。
エンボディドAIの未来は、データから始まる。Nexdataは、信頼性とスケーラビリティを備えたデータ基盤で、あなたのAIプロジェクトを支えます。詳細は、Nexdata公式ウェブサイトまたは営業担当までお問い合わせください。