発信者:Nexdata 日時: 2025-08-07
Nexdataは2011年からAIプロジェクトにデータ支援を提供してまいりました。ラベル済みの既製データ提供以外に、画像・動画・音声・テキスト・点群などのデータアノテーションも1万件以上対応してきました。グローバル的なデータニーズにお応えする中、各業界のデータ難題を深く認識、効率の良い対応法を練り上げました。
今回は、大手製鉄メーカー様から依頼された鉄スクラップ画像に対するセグメンテーションプロジェクトについて解説、アノテーション外注を考える方、現存のアノテーションチームをお見直ししたい方やアノテーションのノウハウを学びたい方には見逃せばいです。
プロジェクト概要
アノテーション対象は画像内のすべての金属物体および周囲の鉄製容器とし、非金属物体は対象外とします。重複する部分については共通の境界線でアノテーションし、漏れがないよう厳密に管理する必要があります。ラベル分類は「金属」と「透彫」の2種類を使用します。アノテーション精度は1~3ピクセルの誤差範囲内で維持することが求められます。
主な誤り事例としては、以下の点に注意が必要:
- 影へ不要なアノテーション
- 小型金属物体の見落とし
- 隙間に見える底盤のアノテーション不足(可能な限りアノテーションを実施)
- 金属の透彫部分の下には「透彫」ラベルを適用すること
アノテーションの課題
本プロジェクトのアノテーション作業には、鉄スクラップ特有の形状や構造に起因する課題が存在します。これらに適切に対応することで、高精度なインスタンス分割データの構築が可能となります。
複雑な境界の判定
鉄スクラップは、変形や重なりによって輪郭が不明瞭な場合が多く、特に境界線の判断が難しくなります。本作業では1~3ピクセル単位の精度が求められるため、細部まで注意深く確認する必要があります。
ズーム機能を活用し、必要に応じてダブルチェックを行い、判定の正確性を確保します。
透彫部の認識
透彫部分(穴あき構造)は、影や汚れと混同しやすく、判定が難しい要素の一つです。下に見える構造を正しく把握し、「透彫」としてラベル付けし、その下の要素は別インスタンスとして扱う必要があります。
小型金属物の見落とし防止
ネジやワッシャーなどの小型部品は、画面上で非常に小さく、見逃されやすい傾向があります。隙間や影に隠れた部品にも注意を払い、画像を拡大して確認します。
影との区別
鉄スクラップの画像には、複雑な影が多く含まれます。影を金属と誤認しないため、以下の点に留意します:
影は周囲と滑らかにつながる
金属の輪郭はコントラストがはっきりしている
透彫では下の構造が見える
一貫性の維持
同一画像内でも素材の状態が異なるため、判断基準のばらつきは品質低下につながります。そのため、
-詳細なガイドラインの整備
-定期的なレビューとフィードバック
-不明点の迅速な共有と判断
を徹底し、安定した品質のアノテーションを目指します。
アノテーター育成方針
本プロジェクトでは、アノテーション精度が最終的なデータ品質を大きく左右するため、事前トレーニングは実務に即した内容で設計しています。鉄スクラップ特有の視覚的特徴(金属の歪み、重なり、透彫、影との区別など)に対する識別力を養うことを目的に、以下を重点項目とします:
-実画像ベースのケース別演習(透彫 vs 影、小型物体の検出など)
-誤認が多い事例のパターン学習と境界判断の基準確認
-指定精度(±3ピクセル以内)を満たすための実操作トレーニング
-初期10枚以上の作業に対するレビューとフィードバックの即時化
また、実作業フェーズにおいても、判定傾向のブレや基準からの逸脱が確認された場合には、速やかに個別フォローを行い、判断基準の再共有を実施。精度・速度の両立を図ります。
品質担保体制
鉄スクラップを対象とするアノテーションは、従来の整形物体とは異なり、視覚的な曖昧さや重複・欠損の多さに起因する誤差が顕著です。これを踏まえ、以下の3層構造による品質管理体制を敷いています:
-作業者レベル:個人の判断ブレを抑えるための定期レビューと小集団内共有
-工程レベル:初期・中期・終盤の3タイミングでサンプリング検査を実施、精度変動をトラッキング
-全体統制レベル:プロジェクト全体のデータ一貫性を管理するレビュアーチームによる集中的なクロスチェックとフィードバック展開
-段階的に納品:お客様の要望を合わせてデータをロット別に点検・納品する可能が可能です。発見した問題に対してもプラットフォーム上でリアルタイムで修正か可能です。
ミスの傾向・頻出箇所・処理時間との相関などもログ化し、必要に応じてガイドラインをアップデート。品質劣化の早期検知・再発防止を仕組み化しています。
本プロジェクトから活用可能なノウハウ
本プロジェクトでは、以下のような技術的・運用的知見が蓄積されており、他の産業用途やモデル精度改善にも資する成果を得ています:
-非定形かつノイズ混在領域におけるインスタンス分割の実践的アノテーション基準
-アノテーターの判定バラつきを抑えるアノテーター教育と品質レビュー体制
-判定曖昧領域への意思決定プロセス導入によるフィードバックループ形成
これらのノウハウは、鉄スクラップ画像に限らず、建築廃材、車載部品、航空整備等の分野のアノテーションプロジェクトにも応用可能です。特に、不規則構造物に対する視覚認識アルゴリズムの学習データとして高い汎用性を持ちます。
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