感情認識はヒューマンインタフェース、コールセンター自動化、ロボティクス、メンタルヘルス支援など、多様な領域で研究と実装が急速に進む注目分野です。特に生成AI・具身知能の発展により、人間の感情状態をより精度高く理解するための高品質データセットへの需要が一段と高まっています。本記事では、代表的な3つの研究領域と、それぞれで求められるデータの特徴を整理した上で、後半でNexdataが提供する既製品トレーニングデータベースをご紹介します。
1. 音声感情認識(Speech Emotion Recognition)
音声感情認識は、声の高さ、抑揚、速度、強弱などの音響特徴から「喜び・怒り・悲しみ・驚き・中立」といった感情を推定する技術です。
最近では、以下のような研究テーマが特に注目されています:
マルチスピーカー・多言語の感情表現への対応
ノイズ下での感情推定精度向上
自然発話に近い「自発的感情」の収集
医療・心理領域での応用を見据えたラベル設計
この領域では、リアルかつバリエーション豊かな音声データの収集、そして高精度のアノテーションが必須です。
2. 表情感情認識(Facial Emotion Recognition)
表情から感情を認識する技術は、カメラ付きデバイスの普及と共に広く利用が進んでいます。
研究トレンドとしては:
マスク着用・遮蔽・横顔など難条件下での認識
年齢・性別・人種差の少ないバイアス対策
微細な表情変化を捉える微表情(micro-expression)解析
3D表情データによるロバスト性向上
高精度モデルの開発には、多様な被写体・照明・環境に対応した大規模データセットが不可欠です。
3. マルチモーダル感情認識(Multimodal Emotion Recognition)
音声、表情、ジェスチャー、生体信号など複数のモダリティを組み合わせることで、人間の感情をより正確に推定するアプローチが急速に主流となっています。
注目ポイントは:
音声 × 映像 の同期データによる精度向上
ロボット・アバター等の具身AIにおける情緒理解
自然な対話データの収集とラベリング
モダリティ間の時系列整合性を確保したデータ設計
マルチモーダル学習では、各モダリティが高品質で揃っていること、同期精度の高さが特に求められます。
4.Nexdataの既製品トレーニングデータベース
19,634動画|表情収集データ
本データセットは男女をバランスよく含み、年齢層は10代から高齢者まで幅広くカバーしており、特に若年層~中年層が主体です。表情カテゴリは、「通常」「微笑み」「大笑い」「ニヤリ」「悲しみ」「恐怖」「興奮」「怒り」「舌出し」「ウインク」「口を大きく開ける」「目の動き」「目をぐるり」など多様な表情を網羅しています。背景環境・年齢層・表情バリエーションの高い多様性を特徴としており、表情認識タスクへの活用が可能です。
1,142名|オンライン会議シーンにおける表情データ
アジア人、コーカソイド、アフリカ系、ブラウン系など多様な人種を含み、年齢層は主に若年~中年層。収集環境は会議室、カフェ、図書館、自宅の寝室など多様な屋内オフィスシーンをカバーしています。各被写体につき、「通常」「喜び」「驚き」「悲しみ」「怒り」「嫌悪」「恐怖」の7種類の表情を収集しています。
詳細:
https://jp.nexdata.ai/datasets/computervision/1281?fromPage=1
68,405動画|57種類の微表情データ
人種はアジア人、アフリカ系、コーカソイド、ブラウン系を網羅。年齢層は「18歳未満」「18~45歳」「46~60歳」「60歳以上」に分類。収集環境は屋内・屋外の両方を含み、顔認証や表情認識など幅広いAIアプリケーションに活用可能です。
詳細:https://jp.nexdata.ai/datasets/computervision/1275?fromPage=1
1,003人感情動画データ
多人種、多様な室内シーン、多様な年齢層、多様な言語、多様な感情を含み、11種類の顔表情、15種類の内面感情を含む。アノテーションでは、各動画の各文の感情種類(顔表情と内面感情を含む)、開始・終了時間、テキストアノテーションをアノテーション。1,003人感情動画データは感情認識、感情分析などのタスクに利用可能。音声認識関連の研究および応用に豊富なリソースを提供し、複数のAI企業により検証済み:モデルが実世界の多様性に対して優れた性能を発揮するのに役立つ。データ保護法規およびプライバシー規定を厳格に遵守し、データ収集、保存、使用の過程でユーザーのプライバシーと合法的権益を保護。すべてのデータはGDPR、CCPA、PIPLに準拠。
詳細:https://jp.nexdata.ai/datasets/speechrecog/977?fromPage=1
4,458名|3D表情認識用データ
収集シーンは屋内および屋外。性別バランスは均等で、年齢層は若年層〜高齢者までカバーし、特に若年・中年層が中心です。収集デバイスはiPhone XおよびiPhone XRを採用。データの多様性は、表情の種類、年齢、人種、撮影環境の4軸で確保されており、3D表情認識タスクに最適です。
詳細:https://jp.nexdata.ai/datasets/computervision/1097?fromPage=1
30本の映画|音声・映像アノテーションデータ
本データセットには39,891件の音声ファイルが含まれ、各音声には対応する動画ファイルおよびJSON形式のメタデータが付属します。アノテーション内容は、音声内容・役名(主役)・感情カテゴリ・タイムスタンプを網羅しており、音声認識や感情付き音声分析などの研究・開発に活用いただけます。
まとめ
感情認識は単一モダリティからマルチモーダルへ、そしてより自然なデータ・多様な状況下での理解へと急速に進化しています。その中心となるのは、用途に合わせて適切に収集・アノテーションされた高品質データセットです。Nexdataは、音声・表情・マルチモーダルを網羅した既製品データセットに加え、カスタマイズデータ収集・ラベリングにも対応し、企業・研究機関の感情認識研究を強力に支援します。